十一面観音(じゅういちめんかんのん)は、観音菩薩の一形態で、
日本や中国をはじめとする仏教文化圏で信仰されている仏様です。
その名の通り、11の顔を持ち、慈悲の心を象徴する観音菩薩の中でも
特に救済力が強いとされています。
十一面観音の概要
特徴
- 11の顔を持つ理由
- 中央の1つの穏やかな表情(慈悲の顔)に加え、10の顔が頭上に配置されています。
- それぞれの顔は異なる表情をしており、様々な苦しみを持つ人々を救うために対応する。
- 怒りの顔(憤怒面)
- 微笑みの顔(慈悲面)
- 物事を見通す顔 など
- 最上部には仏の顔(しばしば阿弥陀仏)が配置され、十一面観音が悟りを体現していることを示します。
- 手
- 多くの場合は2本の手ですが、6本や8本など多手の姿も見られます。
- 各手に法具(蓮華、錫杖、水瓶など)を持ち、衆生を救う象徴とされています。
- また日本においては千手十一面観音として千手観音様と同じにされていることもあります。
- 衣装と装飾
- 美しい天衣(てんね)や装飾品をまとい、観音菩薩特有の柔和な姿を保っています。
十一面観音の役割と象徴
慈悲の象徴
十一面観音は、「悩める全ての人々を救う」慈悲深い仏様とされています。
特に以下のような意味があります。
- 広範な救済力
- 11の顔であらゆる方向を見渡し、人々の苦しみを見逃さない。
- 心の平安
- 見守られているという安心感を与え、心の不安や悩みを和らげる。
- 現世利益
- 人々の願いを叶え、日常生活の悩みや困難を取り除く。
十一面観音が祀られる主な場所
日本国内には多くの十一面観音像があり、古代から信仰されてきました。以下は代表的な寺院や仏像です:
- 奈良・長谷寺(はせでら)
- 本尊は高さ10メートル以上の巨大な木彫十一面観音像。
- 花の寺としても有名。
- 京都・三十三間堂(さんじゅうさんげんどう)
- 千手観音像の中央に十一面観音像が配置され、重要な役割を果たしている。
- 奈良・室生寺(むろうじ)
- 繊細で美しい十一面観音像が有名。
- 岩手・中尊寺(ちゅうそんじ)
- 奥州藤原氏の菩提寺で、十一面観音が金色堂に安置されている。
十一面観音の起源と伝承
- インド仏教の起源
- 観音菩薩は「観世音(かんぜおん)」としてインドの大乗仏教に起源を持つ。
- 十一面観音は特に人々の苦しみを見守る姿として考えられ、後に中国や日本に伝わった。
- 伝説
- 苦しむ衆生を見た観音菩薩がその悲しみに耐えかね、頭が割れて11の顔に分かれたと伝えられる。
- これにより、あらゆる方向を見渡して救済できるようになったとされる。
十一面観音への祈り方
十一面観音は、現世の悩みを解決したいときや、大きな困難に立ち向かう際に祈願する対象です。
以下の方法で祈ると良いとされています:
- お経
- 十一面観音のための経典「十一面神咒心経(じゅういちめんしんしゅしんぎょう)」を
- 唱える。
- 真言(マントラ)
- 「オン マカ キャロニキャ ソワカ」
- 「オン ロケイ ジンバラ キリク」
- 供物
- 花、灯明、水、香などを捧げます。
香川県における十一面観音は、仏教文化の一部として深く信仰されています。
特に四国八十八箇所霊場やその周辺の寺院で祀られている例が多く、
地域の歴史や信仰と密接に結びついています。
香川県で十一面観音を祀る主な寺院
香川県では、以下の寺院で十一面観音が重要な役割を果たしています。
(1) 志度寺(しどじ)
- 所在地: さぬき市志度
- 四国八十八箇所: 第86番札所
- 本尊: 十一面観音菩薩
- 特徴:
- 「海女の玉取り伝説」が伝わる歴史ある寺院。
- 十一面観音が本尊として祀られており、多くの巡礼者が訪れます。
- 病気平癒、海上安全、家庭円満などの現世利益を願う信仰が根付いています。
(2) 長尾寺(ながおじ)
- 所在地: さぬき市長尾西
- 四国八十八箇所: 第87番札所
- 本尊: 十一面観音菩薩
- 特徴:
- 長尾寺の十一面観音は、穏やかな表情で慈悲を象徴しています。
- 巡礼者からの篤い信仰があり、厄除けや家内安全の祈願で訪れる人も多いです。
(3) 根香寺(ねごろじ)
- 所在地: 高松市中山町
- 四国八十八箇所: 第82番札所
- 本尊: 十一面観音菩薩
- 特徴:
- 鬼退治の伝説が伝わる寺院。
- 本尊の十一面観音は、地域の人々にとって守護仏的な存在です。